サルバドール・ダリ(香水の芸術)
2021年 05月 10日
「五感の中で、嗅覚こそが永遠を伝える最良の感覚であることは
疑う余地がない。」
これはシュルレアリスムの代表的な作家として知られているサルバドール・ダリが残した言葉です。ダリといえば、誰もが思い浮かぶ代表作品はやはり「記憶の固執」ではないでしょうか。作品タイトルでピンとこなくても、チーズのように形が溶けて変形した時計が描かれた作品といえば、多くの人はそのイメージが容易に浮かんでくるのではないでしょうか。「記憶の固執」を始め、実に様々なシュルレアリスムの作品を生み出したダリですが、その活躍は絵画だけではありません。
ダリはデザイナーとして商業美術の世界でも活躍しています。ダリがプロデュースした香水が存在するのをご存知でしょうか。
マルチな才能を発揮していたクリエーターのダリにとって、アートとモードの間に位置づけられる、芸術表現の一つでもある香水に興味を持つことは自然なことでした。
ダリが1981年に「クニドスのアフロディテの出現」という絵画を製作した時に、最初の香水への着想が舞い降りてきました。自身が描いた美と愛の女神、アフロディテの官能的な鼻と口からインスピレーションを得て、香水のボトルをスケッチしたのです。
そして1983年に限定ナンバー付きのクリスタルボトルが発売されました。
画家のダリが選んだ女性のための香りは高貴で稀なジャスミン(ダリは絵を描く時によくジャスミンの花を耳に飾りながら描きました)とバラの官能的なブレンドの香りでした。それは香水を発表した前年に失った、最愛の妻でありミューズであった、ガラへの深い愛を込めた、ガラへ捧げるフレグランスだったのです。