武者小路実篤の書と画
2020年 06月 01日
武者小路実篤の作品と聞いてどのようなものを想像されますか。概して、日本では国語の授業で、武者小路実篤の名前を白樺派の小説家として習いますので、その小説名がまず頭に浮かぶ人が多いのではないかと思います。その一方で、味のある野菜の絵に「仲良きことは美しき哉」と書かれた色紙を思い出す方もいらっしゃるでしょう。
武者小路実篤は小説家でもあり、画家でもありました。彼の残した日本画や書、油絵などは多数ありますが、中でも、誰しもがわかりやすい言葉で表現した短詩と、身近にある静物の絵を組み合わせた晩年の作品は、「絵手紙」の元祖といわれています。 日本絵手紙協会は(心を込めて一生懸命にかいたものは、相手の心を打つ、だから上手にかこうと思わないで、その人らしさが出ることが大切である)
(自分の目で見たものをかくこと。花や野菜は神様が創った最高のお手本であるから、それをじっと見つめてかくこと)などを絵手紙の心得として、説いています。
自分の作品を、現代の絵手紙というカテゴリーの中に入れられるのは、武者小路実篤にとっては不本意かもしれませんが、彼の描いた書と画には、大衆の人々に大変支持されている絵手紙の本髄に重なるものがあるように思います。
武者小路実篤は農作業をしながら文筆活動をしていた時期があるので、その時に自然と向き合った経験も作風に影響を与えているかもしれません。
最後に武者小路実篤が色について述べた言葉をご紹介しましょう。
色というものはお互いに助けあって美しくなるものだよ。人間と同じことだよ。どっちの色を殺しても駄目だよ。どの色も生かさなければ。
武者小路実篤
