竹内栖鳳が描いた春
2020年 02月 27日
梅一輪いちりんほどの暖かさ
早春を詠んだこの俳句、詠み人は服部嵐雪(松尾芭蕉の高弟)です。春の足音が感じられる、温雅な俳句です。春の季語として使われる梅は「春告草」とも呼ばれ、その気品ある清楚な姿は古くから桜とともに日本人に愛されてきました。平安時代は「花」と言えば桜ではなく、梅を指したようです。
そのような梅が多くの詩歌に詠まれてきたように、梅は絵画でも多く描かれてきたモチーフのひとつです。
梅を描いた美しい作品は数多くありますが、梅と、さらにそこへ小さな生き物が描かれ、えも言われぬ春の訪れを感じさせる、情緒あふれる作品があります。
日本画家の竹内栖鳳が描いた『梅と鶯』という作品をご存知でしょうか。そのタイトルの通り「梅」と「鶯」のみが描かれているのですが、その傑出した技術によって表現された梅と鶯の姿は詩的で、春の香りがこちらまで漂ってきそうな、早春の情感溢れる素晴らしい作品です。
竹内栖鳳の残した言葉を少しここに引用します。
「画家は自然のものを見つめてその深さを知らねばならぬが、そう見詰めずに深さを知るということも、写生にとって大事なことである。
私は私の眼に映ったものを画くので、たとえ人の眼には円く見えても、色が紫に見えても、私の眼には三角に見えたり、黄色く見えれば、私は自分の眼に見えた通りに画くのです。」
竹内栖鳳