ゴッホの描いたカフェ
2019年 07月 30日
今年の欧州は熱波に見舞われ、記録的な猛暑が各地で続いています。先日、パリで42度まで気温が上昇し、ロンドンでは地下鉄の利用を控えるよう呼びかけるという異例の事態。本来、冷房などなくても快適なはずのヨーロッパの夏が、異常気象によりその状況が随分と変わってきています。
猛暑や酷暑の前では、優雅に「夕涼み」などと言ってはおられませんが、それでも夕方ごろになると、ヨーロッパでは路上に展開したオープンカフェで、夕涼みをする人々の姿が大変多く見受けられます。そのような光景を日々目の当たりにすると、これはヨーロッパ固有の文化の一つなのだなと改めて思います。
ヨーロッパ固有の文化とも言える、『カフェ』の情景を描いた画家は沢山いますが、個人的に、一番に念頭に浮かぶ絵画は、ゴッホの描いた『夜のカフェテラス』です。この絵は、夜空に黒を使わずに描かれている、といった技術的な観点からも、色々と見所は満載なのですが、何よりも実に生き生きとカフェの情景が描かれているところに心惹かれます。
ゴッホが妹に宛てた手紙では、この作品について次のように語っています。
「私はいま描いている作品『夜のカフェテラス』にただ夢中だ。テラスには、人が飲んでいる姿が見える。
ランタンが素晴らしい黄色の光を放ち、店の正面やテラス、歩道、道路を照らしている。」
「夜のライトスポットを描くことは、非常に楽しい時間だ。普段は下絵を描いてから昼間に作品を描くが、すぐに筆を執ってしまった。」
ゴッホの才能と心情が相まって描かれた『夜のカフェテラス』、まるで、星空が輝く下、カフェでくつろぐ人々の賑わいまで聞こえてきそうです。