佐藤忠良の言葉
2019年 06月 28日
現代において、日常のいかなるものにおいても、派手なものや、奇をてらったものというのは、容赦なく私たちの視覚にいとも簡単に飛び込んできます。そしてそれらはその存在の意義をじっくりと問うこともなく、うたかたのように現れては消え、また新しいうたかたが次から次へと、とめどなく現れます。
このような目まぐるしい時代には、美術の分野でも、それに見合うようなものが人々に求められたり、支持されるのでしょうか。
美術が今日まで歩んできた歴史を振り返る時、各々の時代の流行はあれども、年月が経っても決して風化されることがなく、光を放ち続ける作品は素晴らしいと思います。
ここに、40年ほど前に彫刻家の佐藤忠良が小学生向けに書いた図工の教科書の文章を抜粋します。
きみの めで みた ことや、
きみの あたまで かんがえた ことを、
きみの てで
かいたり、つくったり しなさい。
こころを こめて
つくって いく あいだに
しぜんが どんなに すばらしいか、
どんな ひとに なるのが
たいせつか、
と いう ことが
わかってくるでしょう。
(「このほんをよむひとへ」『子どもの美術1』
現代美術社初版 1980年 )
佐藤忠良の言葉を読むと、彼の作品に感じられる真摯な印象や温かさの原点がわかるような気がします。
そして、この佐藤忠良のシンプルな言葉は、私たちを取り巻く、デジタル社会に欠けているものを指摘しているようにも感じられませんか。