パウル・クレーの忘れ得ぬ旅
2018年 06月 29日
人は何故、旅に出るのでしょう。
おそらく、旅をした人ならば誰にでも、「忘れられない旅」というものがあるのではないでしょうか。
前回の記事で、音楽を愛した芸術家、パウル・クレーについて書かせていただきましたが、このアーティストにも「忘れ得ぬ旅」というものがあります。
その旅はパウル・クレーに、とても強いインスピレーションを与えました。
パウル・クレーが、一体どこへ旅に行って強い感銘を受けたのか、想像がつきますか
その旅の行き先とは北アフリカの「チュニジア」でした。それは一見、スイス出身の画家パウル・クレーとは結び付きにくい場所かもしれません。しかしながら、この地はクレーにとって所縁のある土地でもあるのです。実はクレーの母方の家系はさかのぼると北アフリカの血が混ざっているといわれます。
1914年の春、パウル・クレーは友人とともに北アフリカのチュニジアへ旅立ちました。チュニジアの照りつける太陽の光の下、砂漠の色やオアシスなどの原色の世界が、眩いばかりにパウル・クレーを幻惑させたのでしょう。この旅で感じたことをパウル・クレーは興奮気味に手記に残しています。
「色彩が私を手に入れてしまった。これが幸福のひと時でなくて何だろう。」
その旅行以後、パウル・クレーの作品は大きな変容を遂げました。
チュニジアへの旅は、パウル・クレーに色彩開眼をさせた、まさに「忘れ得ぬ旅」だったのです。