アンディ・ウォーホルと映像
2018年 01月 09日
将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう。
アンディ・ウォーホル
ポップアートの旗手、アンディ・ウォーホル。そのマルチな才能と作品は世界的に広く知られ、今もなお多くの人々を魅了してやまないアーティストの一人です。そのような芸術家が「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう。」という大変興味深い言葉を残しています。思えば、まるで今のネット社会の中で、SNSが広く蔓延する世の中を、一足先に予測していたかのような言葉に思えます。
無名の人物が、インターネットを通じて、個人的な画像や動画を瞬時に世界中の人々にむけて配信できる時代を、果たして一昔前の人々が容易に想像できたでしょうか。もしも無名の人物が放つ、ごく個人的な画像や動画が、国を越えて多くの人々の目に留まり、評価されるとすれば‥。確かにアンディ・ウォーホルが言うように一瞬、その人物は世界的な有名人になれます。ただ人々の興味は次から次へと移ろうもの。一瞬、無名の人間が有名になったとしても、次の瞬間には、もう違う人物の放つ物に人々の興味は移っている、というのも今のネット社会ならでは。ですからアンディ・ウォーホルが言う15分という短い時間だけ有名になれるという言葉はなかなかの先見の明ともいえるのではないでしょうか。
さて、時代を越えて不動の有名人であるアンディ・ウォーホルが「スクリーンテスト」という作品を手がけた事はご存知ですか。1964年から1966年の間に、一本がわずか3、4分ほどの短い映像作品を手がけました。そしてその映像の被写体は人の顔、つまりポートレートでした。スクリーンテストの被写体となった人々は、アンディウォーホルがニューヨークに構えたスタジオ、ファクトリーに集う人々でした。ファクトリーには昼夜を問わずアンディウォーホールの知人、友人、あらゆるセレブリティがサロンに集まりました。
「スクリーンテスト」では、わずか3、4分ほどの時間の中で、おのおのの人物が、モノクロの映像の中で自然に醸し出す表情が、何とも言えず目を惹きます。
この「スクリーンテスト」は顔だけを凝視し続ける鑑賞者と、こちらを見つめる被写体との間に静かな沈黙があり、ただただ存在するその被写体の表情にそれぞれが何かを感じとるのです。有名な人物をシンプルに、ただの無名の人のように映像の中に修めたアンディ・ウォーホルの演出とセンスは今の時代にも匹敵すると思いませんか。
