アンディ・ウォーホルは生涯独身で子供もいなかったが、興味深い事に子供のための絵を80年代に多数手掛けている。1983年に契約画商であったブルーノ・ビショフベルガーから子供のために絵を製作してほしいという依頼をされたのが事の発端だった。
小さな子供にふさわしいテーマと大きさの絵を、子供がひとりでも見られるよう、子供の目線の高さにあわせて、絵画を低い位置に展示する展覧会を開きたい、というビショフベルガーの考えにウォーホルは賛同した。ウォーホルは展覧会全体を引き受ける事にし、数多くの( 子供のための絵 )を製作した。ウォーホルは( 子供のための絵 )を500点ほど製作した。ウォーホルが子供のための絵として選んだモチーフは単純な子供のおもちゃの数々である。パトカー、汽車、宇宙船、りんご、サル、ネズミ、パンダ、テリア、オウム、飛行機、ロボット、船、魚と色々なおもちゃが描かれた。これらのおもちゃは大体がブリキでできたような金属製のぜんまい仕掛けのおもちゃだった。いわばスーパーマーケットで売られているような安価なおもちゃをウォーホルは絵にした。
こうしてアンディ・ウォーホルの作品だけで構成された子供のための展覧会が、クリスマス・シーズンにあわせて1983年の12月22日にスイスの画廊で開催された。また、ウォーホルはこの展覧会で魚の模様の壁紙を製作して画廊の壁全体を覆った。それはまるで壁面を魚がぐるぐると泳ぎ回っているような、まるで水族館で水槽の魚を見ているような感覚をひきおこすような、ウォーホルの遊び心が感じられる壁紙だった。
ウォーホルの代表作の数々とはまた違った味わいのある( 子供のための絵 )シリーズは小品ながら、アンディ・ウォーホルのセンスと感性が光っている。そして小さな子供たちへの思いがエッセンスとして凝縮されているかのようだ。
「 子供はいつもビューティフル。どんな子も、8歳の大きい子だって可愛らしい。眼鏡をかけてても、やっぱり可愛い。子供は皆完璧な鼻をしている。魅力的でない赤ちゃんなんか一人も見たことがない。ちっちゃな鼻や口とやわらかな肌。動物も同じだー見た目の悪い動物なんて見たことがない。ビューティフルな赤ちゃんは、人が傷つけたがらないから保護されるんだ。このことはあらゆる動物に当てはまる」。
アンディ・ウォーホル