ミュシャの祈り
2016年 08月 10日
数多くの商業用ポスターや挿絵を手がけ、アール・ヌーヴォー様式を代表する巨匠として広くその名が知られているアルフォンス・ミュシャ。
アルフォンス・ミュシャはパリで成功を収め、活躍した芸術家です。しかしながらミュシャがアール・ヌーヴォーの作家としてパリで活動していたのは、ほんの10年ほどでした。パリで商業的に成功をおさめた後は祖国チェコに帰国して芸術活動を続けました。そして晩年には祖国チェコのために連作「スラヴ叙事詩」を制作するなど愛国者として素晴らしい作品の数々を残しました。
ミュシャは「スラヴ叙事詩」を制作した10年後にチェコにあるプラハ聖ヴィート大聖堂のステンドグラスのための原画を制作しました。
実際にこの大聖堂に足を運び、そのステンドグラスを鑑賞したことがあるのですが、その時のことは今でも鮮烈な印象として脳裏に焼き付いています。大聖堂に足を踏み入れると、石の壁に様々な色彩の光が反射されていて、神々しい雰囲気を放っていました。どのステンドグラスも美しいものでしたが、ミュシャのステンドグラスはそれらの中で一際目立っていました。ミュシャ独特の精巧で緻密なタッチと、その優美な色彩感覚で彩られた素晴らしいステンドグラスの仕上がりに、その前で立ちすくみ、顔を見上げ長い間ただただ眺めていました。ミュシャのステンドグラスを鑑賞することで、新たなミュシャの一面を発見したような気持ちになりました。広告ポスターやイラストレーションとしてのミュシャの絵とは全く違う印象の、それはまるでミュシャの祖国へ込めた強い「祈り」がステンドグラスの作品の中に滲み出ているようでした。
ミュシャは晩年、「ミュシャの絵画は、国民の愛国心を刺激するものである」という理由でナチスのゲシュタポに逮捕されてしまいます。その後釈放されるものの体調を崩し78年の生涯を終えました。ミュシャは芸術について次のような言葉を残しています。
「芸術はただ精神的なメッセージを伝えるためだけに存在する。」
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