横尾忠則氏の作品鑑賞(熊本に想いを馳せて)
2016年 05月 09日
昔、神戸新聞で横尾忠則氏が自叙伝のようなものを連載されていたのを興味深く読んだ事が記憶に残っている。その連載では確かほぼ時系列に、氏が幼少期から美術家として活躍するようになるまでに経験した様々な出来事などが語られていた。そこに書かれていた内容をこと細かくは覚えていないが、なんとも個性的で人生を自分の歩幅でマイペースに精力的に歩んでこられた方なのだなと思ったことは覚えている。そして様々なジャンルの文化人や有名人等との幅広い交流にも驚きをおぼえた。ジョン・レノンとオノ・ヨーコの自宅に招かれたこともあったという。そのような横尾忠則氏だが、次元の違う遠い人というよりは、なかなかお茶目な人なのではないかという印象を著書の文章などから感じられる。確か幼い頃に郵便屋さんに憧れておられたとか。いつだったか大阪中央郵便局で一日局長を務められたことがある、とツイッターでつぶやかれていたが、夢をどのような形であれ現実に引き寄せる力がおありのようだ。
とにもかくにも大変興味深く面白い横尾忠則氏の創る作品はやはり面白い。
特に2000年以降の横尾忠則氏の作品を代表する「Y字路」はタイトルのごとく二叉に分かれた道が描かれていて、それだけの場面が何処かシュールでこちらの空想力を無限にかきたてる。「Y字路」のシリーズは様々な様式で描かれていて、横尾忠則氏の想像力と創造力の賜物のようなシリーズだ。
本や図録で横尾忠則氏の作品を見るのもいいが、やはり実物が一番よい。展覧会で氏の作品を見ると迫力があり不思議の世界にいざなわれるような感覚をおぼえる。実物で見た作品の中で、横尾忠則氏がコレクションした古今東西の滝のポストカードを使った大規模なインスタレーションがあるのだが、それはまるで本物の滝を見ているようでとても迫力があり印象的だった。
今から約10年前に、旅のお供として横尾忠則氏の本を旅行カバンに詰めて熊本を旅行した。一人でぶらぶらと熊本の街を散策していたら、大きく横尾忠則と書かれた文字の看板に出会った。当時、熊本市現代美術館で横尾忠則氏の大個展が開催されていたのだ。その大個展のタイトルはたいそう目をひくものであった。 「横尾忠則− 熊本・ブエノスアイレス化計画」一見、何が何だかよくわからないタイトルだが、熊本のようなおだやかな街にビビットな横尾忠則氏の作品という意外な組み合わせがなかなか斬新で面白いと思い、迷う事なく美術館の中へ入ってじっくり鑑賞することにした。結果それは素晴らしい旅の想い出のひとつとなった。熊本という場所で思いがけず横尾忠則氏の作品に出会えたことは大変恵まれたことだった。ある芸術に何処でどのような場所やシーンで出会うかは、その後のその芸術への印象にかなり大きな影響を与えるように思う。
この度の熊本・大分で発生した地震により被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復旧、復興を心よりお祈り申し上げます。

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