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岡本太郎の壁画

芸術は一般に身近にあり、ふれられるものこそ価値があると考えていた岡本太郎。関東や関西をはじめ様々な地方の場所で岡本太朗が残したパブリックアートを鑑賞することができます。その場所におもむきさえすれば、岡本太郎の芸術をだれもがいつでも無償でみられるのです。前回のブログの記事でふれました「太陽の塔」もパブリックアートのひとつといえます。その「太陽の塔」とほぼ同時期に制作され、対をなすともいわれる岡本太朗の壁画をご存知でしょうか。十年以上も前のことですが大きくニュースにもなったので、おそらくその壁画についての記憶がまだ新しい方も多数いらっしゃるのではないでしょうか。

岡本太朗の絵画の中では最も大きな作品と言われ、1969年に制作された巨大壁画、「明日の神話」。長い間この作品の所在は不明となっていましたが2003年にメキシコシティ郊外で発見されました。養女である岡本敏子さんが直に現地へ赴き、この壁画を確認しました。制作から30年余り放置されていた壁画は迅速に修復する必要があったため、日本へ移送され修復される運びとなりました。岡本敏子さんが「明日の神話」によせたメッセージをここに一部引用します。

『明日の神話』は原爆の炸裂する瞬間を描いた、
岡本太郎の最大、最高の傑作である。
猛烈な破壊力を持つ凶悪なきのこ雲はむくむくと増殖し、
その下で骸骨が燃えあがっている。悲惨な残酷な瞬間。

(途中省略)

外に向かって激しく放射する構図。強烈な原色。
画面全体が哄笑している。悲劇に負けていない。
あの凶々しい破壊の力が炸裂した瞬間に、
それと拮抗する激しさ、力強さで人間の誇り、純粋な憤りが燃えあがる。
タイトル『明日の神話』は象徴的だ。
その瞬間は、死と、破壊と、不毛だけをまき散らしたのではない。
残酷な悲劇を内包しながら、その瞬間、誇らかに『明日の神話』が生まれるのだ。
岡本太郎はそう信じた。この絵は彼の痛切なメッセージだ。
絵でなければ表現できない、伝えられない、純一・透明な叫びだ。
この純粋さ。リリカルと言いたいほど切々と激しい。
二十一世紀は行方の見えない不安定な時代だ。
テロ、報復、果てしない殺戮、核拡散、ウィルスは不気味にひろがり、地球は回復不能な破滅の道につき進んでいるように見える。
こういう時代に、この絵が発するメッセージは強く、鋭い。
負けないぞ。絵全体が高らかに哄笑し、誇り高く炸裂している。

この巨大壁画「明日の神話」は2008年、京王位の頭線渋谷駅連絡通路に恒久設置されました。多くの人々が行き交う駅の連絡通路に設置された「明日の神話」。場所柄、おそらくこの壁画に一瞥もくれずに通り過ぎる人も沢山いることでしょう。しかしこの「明日の神話」が誰でもいつでも平等に無償で見られるところに設置されたのは作者の岡本太朗にとって本望ではないでしょうか。

生前の岡本太朗はパブリックアートについて次のように語っています。

「パブリックアートはいいよ。見たくなったら、そこに行きさえすれば、いつでも誰でも、タダで観られるんだからね。それを観て『ああ、いいなぁ』…『なんだ、こんなものつくりやがって!』と悪口言ったっていいんだぞ。あるいは無視して通り過ぎたっていい。芸術とはそういうものなんだ。なんでもないもの、道端の石ころと一緒なんだよ。」

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by galerie-h | 2016-02-01 12:22